usefulなぜ日本メーカーはアップルになれないのか
更新日:2015.02.18|お役立ち情報 お知らせ 新着情報 テクノロジー「デザインは化粧ではない」――。この言葉は、書籍『ジョナサン・アイブ』の中で、スティーブ・ジョブズの言葉として度々登場する。「化粧」というのは、製品のうわべだけきれいにすることを表している。これに対して、本連載の第1回で紹介したように、アップルやジョナサン・アイブは、ユーザーが製品をどう感じ、どう使うかまで意図して開発することを「デザイン」と受け止めている。
「我々が目にする製品の多くは、ただ見た目を変えることだけを目標につくられている…イノベーションがないばかりか、純粋に時間や持っているリソース、より良く仕上げるための十分な気遣いをすることもなく…」(ジョナサン・アイブ/2007年)
このアイブの言葉から8年がたち、iPhoneがあれだけ大成功をおさめた今でも、製品の見た目だけを差別化する「お化粧」でつくられた製品を数多く目にする。家電量販店の一部の陳列棚は、まるでこの「厚塗り化粧商品」の見本市のようだ。どこのメーカーの商品も一緒くたにひも付きでズラーっと並べられる。商品の周りにどぎつい色の「値引き」や「ポイント還元」の札が取り巻く売り場では「私を買って!」とどぎつい化粧で商品を目立たせる必要があるのかも知れない。
男性ばかりの製品企画部門が「女子高生層にも売りたい」と考えて「女子=ピンク」のステレオタイプでピンク色モデルを用意したり、(一過性の)話題になるからとオタク層を狙ってマンガ・アニメとコラボしたモデルをつくったりする表面的な“化粧”の商品も少なくない。
この十数年の間、日本のものづくりからは本来の丁寧なプロセスがどんどんなくなり、つくり方も、売り方も力任せという印象を持つのは筆者だけだろうか。こうした状況が長く続いたことが、日本の家電製品の魅力をあせさせてしまった一因に思えてならない。
しかし、日本のデザイン力が衰えているかというと、決してそんなことはない。例えば毎年4月にイタリアで開催される世界最大のデザインの祭典「ミラノサローネ」に足を運ぶと、日本のクリエイター達は大きな注目を集めている。
深澤直人氏はサムスン電子から依頼を受け、2009年に「ミニノート型パソコン[N310]」のデザインを手がけてグッドデザイン賞を受賞している。そして、前回紹介したように、アップルはパナソニックを辞めた後に個人で活動していたデザイナーの西堀晋氏をヘッドハントして、ジョナサン・アイブのチームに引き入れた。西堀氏以外にも、アップルと仕事をした日本人デザイナーが少なくない。
※ 日経ビジネスオンラインより抜粋